起業の際の株式譲渡

Gerd AltmannによるPixabayからの画像 7.起業

企業というのは、法人という、いわば「法的に人格を所有すると見做す」存在である。だから、企業の経営者と出資者が同一人物であっても、その企業と経営者は法的に「別人格」と見做される。
よって、ワンマン企業の社長が、「この会社は100%出資で俺が立ち上げた会社だ! だから会社の金は俺のものだ!」とばかりに企業の資金を私的流用することは許されない。
この感覚は、一人社員の法人を立ち上げた社長が一度は感じる「違和感」だという。

私は以前、「飲食業のスタートアップに関わり、ゆくゆくは経営に参加したい」という旨の夢を語ったけれど、それにはまず何をさておいても「資本金」が必要である。
ただこの資本金、今現在では、株式会社、合同会社(出資者を経営者と見做し、出資者全員が有限責任を持つ企業のこと。Amazon、Google、Apple等も合同会社である)ともに、1円からの資本金で法人を設立することが認められているため、実のところは法的な意味で「資本金がない!」、ということはまず、あり得ない。
けれども、さすがに1円では他の企業どころか銀行や税理士さんにもほぼ相手にしてもらえないため、やはりまとまった資金を用立てる必要はある。

加えて、私のような飲食の経験を積んでいない人間が飲食業に携わる方法としては、おそらく「出資」という行為で関わることくらいしかできないだろう。そこで、たとえば渋谷の駅近に八十席くらいの大焼肉店をオープンしたい、ともなれば、6~7千万くらい出資できないとお話にならないが、ほどほどの私鉄沿線付近にこじんまりとした店舗を構える、くらいならば5~8百万の出資ですむようだ。
このへんの相場感覚は、あくまでも私の私見で、それもFounderという事業家投資家マッチングサイトを眺めての結論なので、あまり当を得ていないかも知れない。実際はもっと高額な出資が必要になる場合もいくらでも想定できる。

そのため、私が想定する起業には、おおよそ1千万の資本金(話が来た時に、右から左へ出資することができるための金額。他の業種と違い、設備費用や本店の賃貸料等が発生しないというメリットがある反面、出資額が確実に回収できる算段は信用と運任せであるため、焦げつきやすいリスクを伴う)が必要、と算段している。
そして、会社の当座の運転資金(アタリマエだが、起業時点では顧客(つまり懇意の事業家)はいないため、次以降に出資を行えるようにするための運転資金を別事業で稼ぐ必要がある)用の種銭として、現在個人所有している株式を、新たに設立する法人に「つけかえる」必要が出てくる。

「つけかえる」とは、つまり「法人への株式譲渡」である。ので、当然のことながら譲渡損益に対し、所得税がかかってくる。親の顔より見た公式、

(譲渡価額ー取得価額) × (20%+0.315%)

という、アレだ。
振る舞いとしては、所有株式を全て利確し、収益分を株式譲渡により発生した所得税として支払う、というイメージになるだろうか。
ただ、ここで注意すべきは、「持っている株式」は「法人へ譲渡」するのだから、上記の所得税は、自分が所有している別の金融資産から払わねばならない、ということだ。

単純計算すると、例えば株式を2千万分持っていたとすると、これを法人へ譲渡した場合、4百万強のおカネが別途税金としてのしかかってくる、ということだ。(※ただし、これは取得価額を0とした場合)
ただ実際は、注にも示したように、取得価額分は引いて算出するので、たとえば利益分の2百万の20.315%で40万強、ぐらいの金額に過ぎない。

いや。
過ぎない、と言っても、40万円だってでかいおカネには変わりない。ただでさえ、起業にはおカネがかかるのだ。およそ資本金とは別に、登録免許税・謄本登記手数料・定款認証手数料・定款印紙代・印鑑作成費・登記簿謄本取得費・司法書士礼金等、ざっと見積もっても20万以上のおカネがかかる。つまり、ただ会社を興すだけで60万円、確実にかかるということだ。資本金以外に。

そして、翌年以降は、法人税に加え法人住民税・法人事業税・各種保険・税理士顧問料等がのしかかってくる。いわばおカネはいくら稼いでもおっつかないくらいの勢いで飛んでいく。

いや、ほんと。
法人を維持するというのは、おカネがかかるのだ。
だから、それくらい大きく儲かるアテ、というか、食い扶持が見つからないのならば、多少の税金の多寡は目を瞑り、個人で細々とやる方が、傷は少ないのかも知れない。
しかし。

そんなことを言っていても、道は拓けない。
見つからないのは普通のこと。それを見つけてこその、起業である。

理想はね……。

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