投資についての考え方(実践者と非実践者の違い)

Sebastian WagnerによるPixabayからの画像 4.投資

「日本は、人口オーナス国であるから、経済は成長することはない。経済成長マイナスの国に投資をする意味が分からない」

こんなことを言う人は、多くいます。
上記の言葉は、非常に的確に現状の日本の問題点を指摘しており、大筋では正しい、と言えるでしょう。
しかし、投資実践者はこのような言葉は言いません。
なぜなら、「投資家から見ると」、この言葉は真実ではないからです。
※間違いだ、と言い切るわけではありません。必ず真実とは限らない、という意味です。

たとえば。
現状、というと区切りが曖昧なので、直近五年、2016年から日経平均を眺めてみますと、2016年4月に14,000円台だった日経平均株価はじりじりと上昇を続け、コロナ禍による暴落(2020年3月19日の16,552.83円が底値)を経て、2021年6月15日現在、29,441.30円をつけ、3万円台の大台を狙う位置にあります。
なぜだろうか、と考える前に、「株価は実体経済を反映しないインチキの指針だから」などと返答してそこで終了する方が非常に多い。そういう方は得てして、経済指針として新聞の社説やテレビのニュースキャスターのコメントを反証にお使いになる。随分と実体経済にお詳しいようで。

ただ、そういった方たちの気持ちも分からないではないのです。経済成長マイナスで、デフレにあえぐ日本において、株価のみが上昇していく姿を見れば、インチキだとわめきたくもなろうというものです。

実は、現状の日本の株価上昇を説明できる証拠、と言いますか、理由はいくつか、ございます。
例えば、円安。ブルームバーグで、「既に衰退した日本は、コロナワクチン接種でも遅れが目立ち、安全資産の地位から転げ落ちた」という記事が出ました。ドル安なのに円安、という現在の状況を説明した記事です。円が忌避され、大口投資家が逃げ出した、という理由付けです。
例えば、量的緩和。日本の金利は長年ゼロ付近で推移しており、札を刷っても刷っても銀行に留まるばかりでいっこうにインフレが起こる様子がなく、しかたなく日銀が株式に換え、それによって株高を維持している、という考え方。
例えば、アメリカ。投資の神様と言われるアメリカのウォーレン・バフェットが、日本の商社等の株をごっそり買ったというニュースもありました。

とまれ、こういった複数の原因から、株高が演出されている、というのが、懐疑主義者の方たちが納得できる理由となるのではないでしょうか。

ですが、ちょっとまっていただきたい。

そもそも、マイナス成長だから株は延々と安くならなければならない、という考え方、それ自体がおかしいとは思いませんか?

その考え方は、たとえて言えばデフレ下では全ての物価が下落を続け、一度でも経済的に失敗した国は決して挽回のチャンスは回ってこず、優秀でない労働者はただでこきつかってやるのももったいない。そんな発想と似通っています。

物には全て、「適正価格」というものがあります。
その適正価格を探る行為が、東証や名証、マザーズなどで日々行われている「株取引」です。
そして、現状の日本の企業は、既に「マイナス成長であること」や、「人口オーナス」、「円高」、「経済の低迷」……etc. を、全て「織り込んだ」価格で取引されている、というのが投資経験者の常識であり、通念です。
つまり、我々が考えるような悪材料は、既に株価に反映されている状態である、ということです。

ですから、日本企業の株価を見ていると、バランスシートに問題がなく、きちんと利益を上積みしているような優良企業の株式が、PER8、PBR0.8と言ったような、不当な安値で取引されている例が山ほど出てきます。そう。今現在日本の株価は、実際より「不当に」安く見積もられている、ということです。

この「不当に」の部分こそ、先ほど繰り返し紹介した「悪材料」の部分である、と、こう言いたいわけです。

そして、この株価は、例えば、「円高→円安」といった「ルールの変化」によって、いともたやすく上下動します。
現在のルールで保たれていた均衡が、「新たなルール」によって崩れ、また「適正価格」を探っていくわけです。

ゆえに、マイナス成長の国においても、その国の企業の株価は上がり続けることだって、あるわけです。その前に「不当に」安く評価されてさえいえば。

では、私は結局、何を言いたいのかと言いますと。

昨日、私は中国の伸びしろについて、「嘘なら嘘なりの統計で経済は推移する」と申し上げました。
ここには、かなり深い意味を盛り込んだつもりです。
聞き慣れた言葉で、これを表現してみましょう。

「バブル」

つまりは、そういうことです。

では、新しい疑問。
「そんな危険だと分かりきってる市場で、なぜ売買を行い儲けようとする外国人がいるのだろうか?」
これも簡単に答えが出ます。

「単に、嘘が跋扈するような不安定な市場は、ボラティリティが高く、投機的な売買をする投資家にとっては一攫千金を狙えるスリリングな市場であるため」。

ある条件が必要な人にとって、正義とか悪とか、嘘とか真実とか、誠実とか詐欺まがいとか、そんなものは関係ないのです。ある条件とは、つまり。
「儲けられるのか、儲けられないのか」。

株式は、売っても買っても利益を得られるチャンスを、投資家に提供します。
ですが、こんな格言もあります。

「買いは家まで。売りは命まで」。

無謀な投機は、くれぐれも控えましょう。

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