投資家から「出資」を受けよう ~導入編~

Gerd AltmannによるPixabayからの画像 1.創業計画

結論から申し上げますと、投資家から出資を受けるには、以下の二つを満たせばよい、と考えます。

・大きく成長が見込めるお店であること
・投資家に「分かる」事業内容であること

当サイトは、飲食業に特化した資金調達の選択肢としていただくために開設しましたので、正直、ITとかSDGsとかSaaSとかPPPとかはよく分かりません。
このように投資家はたいてい、長年手を染めてきて「読める」「分かってる」分野、自分が得意とする分野を持っているものです。

電話や飛び込み……というのは今時流行りませんが、マッチングサイトを使うにしても、あるいはピッチ等のセミナーに参加するにしても、
「自分の強みを理解してくれる投資家に巡り合う」ことが、まずなにより先決であります。
投資家は、自分の理解できないことに興味がないわけではありませんが、自分の現状分かってない分野にいきなり投資を考える、ということはまずありません。
勉強をしないわけじゃないですが、実際その分野で生の取引をしてみないと分からないこと、というのがいっぱい出てくることが、分かっているからです。

例えば、飲食店なら、「カレー」「ラーメン」「焼き肉」等、ジャンル別に強い投資家、というのもいるでしょう。
「ビジネス街立地」「郊外型店舗」「秘境店舗」等、出店場所にこだわる投資家もいるかと思います。
まあ、起業家さんはむしろ自分の強み、創業内容を「押し出して、知ってもらう」ことに長けており、情報の取得も容易ですが、なかなか投資家側の情報って、得ることが難しいのかな、とは思います。
昔あったテレビ番組「マネーの虎」などは、投資家側の情報がきちんと開示されている点で、かなり画期的だった番組ではあるのです。(投資家社長の傲岸な態度は、正直見ていて不快でしかありませんでしたが)

が、それでも情報がある程度入るならば、せめて「飲食店に強い」投資家を選んで出資をお願いしてみる、くらいのことはなさった方が、成約確率も確実に上がることは間違いないところです。

まとめ
まとめ

「分かる」投資家を見つけることが、先決です!

また、開示する起業家さんの事業計画も、融資を前提とした金融機関等に出すものとは少し趣向を変える必要があると思います。

融資元の金融機関にとっては、まず重要なのが「返済してもらえること」です。
なので、審査の際に重視するのは、事業が「潰れないこと」「安定していること」「信頼できること」です。一言で言うと、「儲け続けられる人かどうか」ということです。

対して投資家にとっては、何より重要なのが「でかくなる(成長する)かどうか」です。
自分の投資した額が、どれだけ大きく育って返ってくるか。それは株や投信やREITやETFやCFDやコモディティや国債やIPOと比べて、どれだけ安全で、どれだけ成長性があるのか。そういうことです。

ですから、投資家に創業計画を開示する時は、「早く、あるいは時間がかかっても大きく、成長します!」ということを力説してくださると、「おお!」という反応が返ってくるはずです。

とはいえ。他の業種ならば分かりませんが、こと飲食業でそこまで大きく成長する方法となると、出店攻勢をかけてチェーン店化する、という目標になってしまいますね。もちろん出資を願う方はそんな方ばかりではないはずなので、そうでなくとも、だんだんと店を大きくし、2店舗、3店舗目くらいは出したいです、くらいの目標を持ってくだされば、という思いです。

また、肝心の「リターン」(投資家へ還元する資金)ですが、ある期間Founderというマッチングサイトを使った感じでは、一定の相場観があるようです。

おおむね、売上の3~6%、というところでしょうか。
ミソは、「売上の」というところです。小さな出資ならば出来上がるお店は小さいでしょうし、大きく出資すれば大きなお店、あるいは都会の出店、ということになるでしょう。
すると、出資額に比例して売上は「右肩上がり」のグラフを描くことになります。よく出来ています。
大きく出資すればするほど、リターンも高くなる、という図式です。

で、投資家はリターンを開示されると、必ずこういうことを考えます。

「とすると、何年で元金が回収できるかな?」

株式の世界では、PER、という言葉があります。
現在の株価を、一株あたり会社がいくら利益をもたらしたか(EPS)で割ると、株価収益率(PER)という数字が出ます。
このPERは、「この株で得た利益が、あと何年で買った金額と同額になるか」という指針になります。株価が千円で、一株あたり利益が100円とすると、PERは10(倍)ということです。
つまり、この株1株を10年もつと、利益は千円となり、1株株価と同額になるわけです。
この、PER10倍、というのは、投資家目線ではなかなかの有望株であります。
(※ただし、成長株か安売り株か、赤字か黒字か、業種は何かによって、このPERは千差万別となるので、一概には言えないのですけれど)

なので、出資を希望する方は、このPER=10倍がまずはライン際の目安、と考えていただいていいでしょう。

ですが。
株式と飲食店様からの出資契約とは、いくつかの違いがあります。
まず、株式という「換金価値があるもの」が手元に残るか残らないか、というところにあります。
株式なら、いざ「だめだった」という時は、売ってしまえば元金を割っていたとしてもある程度の資金回収が出来ます。しかし、出資契約では、「だめだった」ときは何も返ってきません。

その代わり、出資契約は「価値の減衰」があまりありません。
まあ、売上の○%、という契約の場合は、売上の多寡によってリターンという価値は上下しますが、それは株式のようにまったく読めないものではなく、経営者の資質や季節、経済状況等である程度予測可能なものとなるため、トータルでの価値管理がしやすいのが強みです。株式だと配当が勝手に減らされたり、なくなったりなんてことはざらですから。

倒産リスクについても触れておきます。
株式を上場している会社ともなると、それなりに大企業です。中小も含めた一般企業の生存率で比較することに意味はないかも知れませんが、あえて記します。

一般的に、企業の十年生存率は70%、と言われています。
これがベンチャー企業になると、五年で16%、十年で6%前後となるそうです。

飲食店の場合ですと、五年生存率は20%、十年で5~10%と、ベンチャー企業とほぼ同じという、なかなか厳しい生存率となっております。

このようなリスクを勘案すると、正直な話、PER = 10倍はちと厳しい。6倍くらいは欲しいかな、と欲張りな投資家なら考えてしまうことでしょう。

しかし、これは数字のトリックであると、私は考えます。

飲食店は、初期投資こそ大きくかかり、創業融資や自己資金も多額になる傾向にありますが、参入障壁(起業のしやすさ)は一般企業と比べてぐんと低くなります。
ゆえに、財務に関する知識を充分に蓄えないまま、飲食店の調理師としての技量だけで勝負する起業家さんが多いための高倒産率だと考えるのです。

なので、これから私が書こうと思っている「投資家に出資を受けるための経営シミュレーション」を試しに行っていただき、利益がどれだけ出ればいいか、固定費変動費をどう抑えたらいいかを充分理解なさっていただければ、飲食店の生存率はぐんと上がると思います。

となれば。株式と同じ PER = 10倍でも、起業家さんがきちんと財務に精通しておられるならば、充分に魅力的な投資先となり得る、と、私は結論づけます。

それでは、まとめです。

まとめ
まとめ

大きく成長してくださることが、投資家の喜びです。
リターンは、PER = 10倍 が優良株かどうかのラインです。

ともあれ、少し投資家側の偉そうな欲求を喋りすぎた感はあります。
大上段に立ったような物言いについては謝罪するといたしまして、次回以降は、実際の

「投資家向け創業計画の見せ方」

について、語っていこうと思います。

それでは、本日もありがとうございました。

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