創業コンセプトを練る

Gerd AltmannによるPixabayからの画像 1.創業計画

本日は、豆知識から入らせていただきます。
江戸中期の頃。酒屋に酒を買いに来る客が、だんだんと店の中で飲むようになっていきました。
そこで酒屋は、そんな客のために簡単な肴を用意し、売るようになります。
やがて小上がりを作り、あるいは床几(しょうぎ=長椅子)を置き。
「居酒致し候(いさけ、いたしそうろう)」
という看板を掲げるようになります。

これが、「『居』酒屋」の始まりです。今でいう、「角打ち」のような感じでしょうか。

そのうち、煮売屋や屋台が酒を置くようになり、「居酒」ブームは江戸中を席巻し、二千に近い居酒屋が商売を成立させていた、ということにあいなります。

このように。
「酒屋」しかない状態で、「居酒屋」を思いつくのは難しいでしょうが、お客のニーズに気づければ、そこから店は一気に成長することが出来るのです。

『自分のやりたいこと、作りたい店』を思考の中心に据え、そこからあるべき店の姿をイメージしながらお店作りをしていく、というのもいいでしょう。夢を叶えられる、というのは素敵なことです。
しかし。そのコンセプトが仮にその街、その土地、その界隈、そこを通る通行人の「ニーズに合致して」いなければ、その素敵なお店はたぶん素通りされてしまう、という現実が待っていることでしょう。

そもそも、「自分の欲求」からスタートするならば、それにそぐうような「土地」・「場所」を探さなくてはなりません。
自分の思うような店を必要としてくれるニーズがたまたま「空いている土地」「空き店舗」にあり、かつ、地代も安く済んでしまった。ラッキー!

……考えてみれば。
そんなうまくいくわけないよね、と思いませんか?

前回からの繰り返しになりますが、創業コンセプトは、「街からもらう」のです。

さて。
では今回のメインのお話。
街のコンセプトを見つけたら、それを自分のお店にどう「反映する」か。
……という内容になります。

ここで、話はやや飛んで、株式の話になります。
アメリカのとある著名な投資家・著述家に、ハワード・マークスという人がいます。彼はその著書で、投資で他人を出し抜く思考方法として「二次的思考をせよ」ということを言っています。
二次的思考とは。

例えば……。

・「これは良い企業だから、株を買おう、というのが一次的思考」
・「これは良い企業だ。ただ、周りは偉大な企業だと見ているが、実際にはそうではない。
  この株は過大評価されていて割高だから売ろう、というのが二次的思考」

・「 経済成長率は低下し、インフレ 率は上昇する見通しだから、持ち株を売ろう、
  というのが一次的思考」
・ 「景気見通しは悪いが、ほかの投資家はみなパニック売りしている。今が買いどきだ、
  というのが二次的思考」

※ハワード・マークス. 投資で一番大切な20の教え
賢い投資家になるための隠れた常識 (日本経済新聞出版)

言いたいことは分かっていただけたと思います。
しかしマークスはこれに続けて、二次的思考が出来る人は希有であると但し書きした上で、こう述べています。

「すばらしい投資成績を達成するには、資産の価値についてコンセンサス(一般的な共通観念)とは違う見方をしなければならず、しかもそれは正確でなければならない。これは簡単なことではない」

つまり。
街のコンセプトをそのまま引き写す(一次的思考)のではなく。
街のコンセプトから、一歩考えを深め、どんな店を開けばこの街のコンセプトに沿うか。あるいは逆に反することで、目立てるか。あるいは街全体が見落としていたために、他の店を大きく出し抜けるか(二次的思考)。

それを考えるのが、「創業コンセプト」というわけです。

しかし。
それを行うにはまず、あなたの分析と、あなたの発見と、あなたの見通しが、「正しくなくてはならない」というのが、必須条件です。
ハワード・マークスも、そこをこそ強調しているのです。

「正しく洞察せよ」というのが、二次的思考が爆発的な力を持つための「最低条件」です。

では。
正しく洞察するためには、どうすればよいのでしょうか?

……すみません。
もっとも肝心な、その答えは、私の中にはありません。
というより。
街ぐるみで気づいていないようなことを気づけるようになる特効薬なんて、本来あるわけがないのです。
ただ、ヒントはあると思います。

例えば。
その界隈で、なぜか一店舗だけ、異様に繁盛しているお店がある。
例えば。
人通りが多いのに、なぜか周辺の店内は閑散としている。
例えば。
路面店より2F店の方が賑わっている。

その土地土地に、「異状……普通で考えたらありえない状況」が発生しているならば。
それは、「正しい洞察」を導くための導入になってくれることでしょう。

あとは、考えて、考え抜くことです。
そして、あるひらめきが宿ったならば。
おそらくそれが、あなたのお店の「コンセプト」となるはずです。

そこから先は、その「コンセプト」を実現するための逆算をしていけばいいのです。
Aというコンセプトを見つけた。ではAを実現するために必要なものは?
⇒B、Cが必要だと分かった。
ならば、B、Cを実現するための手段は? いくらかかる? 時間は? 人は?

その全てに勝算が宿ったならば。
おそらく、「勝てる」お店が、できあがることでしょう。

それでは、本日もありがとうございました。

タイトルとURLをコピーしました