未来の株価を推測する

Sebastian WagnerによるPixabayからの画像 4.投資

おはようございます。
今回からしばらく、投資、それも個別株投資に絞ってご紹介することを目的とした投稿となります。

まず、株式投資をする上で、どのような判断基準に従って投資を行うのか。そのよりどころとなる分析方法について、基本のところを述べて行きたいと思います。なお、内容はかなり初心者向けのものとなりますので、中級者以上の方は、本稿で増える知識はないと思います。

テクニカル分析とファンダメンタル分析

テクニカル分析とファンダメンタル分析。大きく分けてこの二つのどちらか、あるいは両方を用いて、投資家は個別株の判断基準としています。

  • テクニカル分析……その株(あるいは市場全体、あるいは特定業種全体)の過去の値動きからなんらかの規則性(トレンド・パターン)を見いだし、未来においてもその規則性が継続すると仮定する分析法。
  • ファンダメンタル分析……特定企業の財務状況・株価・資金繰り。あるいは日本・外国・公共団体等企業を取り巻く全体的な経済状況・ニュース・トラブル等の情報から、その企業の将来の株価指標を推量し、判断基準とする分析法。

それぞれにメリットとデメリットがあり、投資家は通常、どちらかの分析法に偏って判断することになります。どちらがより正しいのか、という議論は無意味です。はっきり言えば、どちらも正しく、どちらも真の意味でアテにはなりません。
前回からの繰り返しになりますが、人間は、過去の分析は出来ても、「未来(これから起こるかも知れない)の、予測不可能なインパクト」を予想出来るわけではないので、「それ」にともなう株価の上昇・下落は、厳密な意味で判断することは不可能なのです。未来は誰にも分からない。いわばこの二つの分析法は、「占いの材料集め」という側面しかない、と割り切る意思が大切です。

二分析法の向き不向き

二分析法を「占いの材料集め」と割り切ったところで。

過去の市場経済が積み重ねた数字から、「現状のまま推移する」という仮定をする場合において、どちらの分析法も、未来についてのおおよその株価の推移を予想することが出来ます。ただ、この予想をする上でも、二者には向き不向きがあります。

  • テクニカル分析は、「多くの企業の株価を、短期(通常1年未満)で推移する予測が必要な場合」に向いている。……(1)
  • ファンダメンタル分析は、「これは、という数社の株価を、長期で判断する必要がある場合」に向いている。……(2)

テクニカル分析は、例えばデッドクロス、ゴールデンクロス、トリプルボトム、トリプルトップ、などの、株価のチャートや移動平均線がもたらす「定番の形」に着目し、それを他のいろいろな企業(業種)の指標にも当てはめる、ということをします。
この手法を用いるならば、その企業における内幕……財務や取引先、キャッシュフロー等々……を知らなくても、分析自体は次々と出来てしまいます。
また、個々人レベルではいろんな判断基準で株を選ぶのでしょうが、そういう人たちが合わさった「大きな市場においては」「統計的に」同じような売買の線を描くのではないか、と推測できます。
その企業にとって悪いニュースがあれば株価は下がるでしょうし、良いニュースなら株価は上がるでしょう。また、素早い機関投資家がしのぎを削るなら、判断は結果的に「より早く、より正確に」なるはずなので、株価の上下はより規則的になるはずだ、という推測も出来そうです。
以上、簡単なモデルを当てはめることで多くの企業の株価を「素早く」「簡単に」分析できることから、(1)のようなことが言えるわけであります。

対して、ファンダメンタル分析は、特定の企業の株式指標・財務諸表・キャッシュフロー表、あるいは為替・日経平均・S&P500・ナスダック・ダウ・上海・深圳……等、企業と企業を取り巻く経済体全体の情報を元に、その企業の「適正株価」を割り出します。
方法はそれこそ人によってさまざまであり、たとえばかのウォーレン・バフェットはこの「適正株価」を見抜く手腕に一定の評価があり、ゆえに長期で株式を運用することで莫大な資産を築いたのはご承知の通りです。
ですが多くの情報を適切に処理し、評価に落とし込むにはバフェットのようなある種の「ひらめき」と「基礎教養」が求められます。誰に出来ることでもありませんし、そこまで努力して出した評価が例えばコロナ禍のような突然のバッドニュースによって一気に崩れるなどということも珍しくありません。努力のわりに報われない分析法のような気もします。が、企業の体力自体はそれこそ常に変動するものの、その業態・業種の経済規模自体はそうそう変化するものではなく、きちんと分析できればそこに若干の修正を加えるだけで再び正確にちかい指標を得ることも難しくはありません。
また、昨今は証券会社もDX化が進んでおり、難しい計算や膨大なデータを即時に計算しwebで表示するようなサービスを備える証券会社も出てきているので、昔ほどの困難ではなくなってきています。
以上、一つ一つの分析にそれなりに膨大な時間と知識と手間は掛かるものの、深く企業を知ることで、未来の企業の価値判断をより正確に分析できるだろう、という観点から、(2)のようなことが言えるわけであります。

個人投資家に向いているのは

あくまで私の感想ではありますが。
計算の速さと正確さ、判断の速さ、見切りの機敏さにおいて、個人投資家は機関投資家には適わない、と思っております。なので、個人投資家がテクニカル分析による株価予想が必要な、短期運用(デイトレードやスイングトレード)を行う場合は、あくまでも

「機関投資家に乗っかり、ちょうちんをつけて尻馬に乗る」

ような投資に限った方がよいのではないでしょうか。
利ざやの限界まで望むのではなく、ある程度で先逃げをする、ということであります。
ただ、このような投資は投資ではなく「投機(博打)」であり、未来のための資金を運用する、という個人投資家の理念にはそぐわないのではないか、と思います。これまた、私の感想ではありますが。

対して、個人投資家に向いているのは、ファンダメンタル分析による投資である、と結論します。
ですが、ファンダメンタル分析をする上では、やはり、最低限の会計知識を身につける必要があるのではないか、と思います。例えば、財務諸表(B/L、P/S、キャッシュフロー)を読みこむことが出来、企業の収益性を読めるくらいにまでなっておけば、ファンダメンタル分析の精度はかなり上がることでしょう。

ファンダメンタル分析で何を見るのか

ファンダメンタル分析で何をしようというのか、何を見るべきなのか。最終的に、何を結果として出せば良いのか。という疑問が発生すると思います。
もちろん究極的には「その企業の理論株価」ということになりましょうが、その価格を何によってピンポイントに断定するのか(あるいはただ単に、現状より上がるのか下がるのか)、ということです。
これは、結論を申し上げれば、その企業のROE(自己資本利益率)であります。

ROE(%)=当期純利益÷(純資産-新株予約権-少数株主持分)×100

ROEは、上記計算式で求められます。
一言で言うと、「企業の利益が、毎年何%積み上がっていっているか」という指標です。
ROEが毎年プラスなら、原則、その企業の利益は幾何級数的に積み上がるはずであり、
積み上がった利益は、設備投資等の拡大再生産に回されるか、内部留保となるか、株主に還元される(配当金)か、自社株買いに回されるはずです。
設備投資ならば企業の資産が大きくなり、生産量も上がり、利益も大きくなり。
内部留保ならばキャッシュフローが潤沢となり。
配当金が上がれば株主として儲かり。
自社株買いなら株価の上昇となり得ます。

株主としては、いずれの事態も歓迎すべきことです。

さて。今回はテクニカル分析とファンダメンタル分析について簡単な説明を試み、個人投資家はファンダメンタル分析による長期投資を(個別株をいじる場合は)行うべき、という結論としました。
なお次回は、ファンダメンタル分析によって狙う「市場の種類」について語っていきたいと思っております。煎じ詰めれば、日本株なのか世界(あるいは特定の国の)株なのか、ということであります。

それでは、本日もありがとうございました。

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