人件費は固定費? 変動費?

Steve BuissinneによるPixabayからの画像 3.会計

以前のブログ、「融資を依頼する前に~」で、私は人件費を変動費とする、と申しました。
実は、会計的な知識で言うと、これは誤りです。
人件費は固定費で扱うのが、一般的な商業会計、財務会計の常識です。
ですが。

会計というのは、その企業の実態を出来るだけ正確に表すことが原則ですので、人件費もまた変動費的であるならば、変動費として扱うべきなのです。
たとえば。「パソナ」等の派遣会社、派遣業において、自社が抱える派遣社員にかかる人件費は、

派遣会社の「売上」= 派遣社員の派遣先賃金

となることから、変動費として扱うのが企業実績をより正確に表していることが分かると思います。

では、飲食店の場合はどうでしょう。
結論から申し上げれば、飲食店のスタッフ……調理師(キッチン)、ウェイター・ウェイトレス(ホール)……の人員をどのような雇用形態にするかで、変動費固定費の扱いは変わってくる、というのが本当のところです。

高級割烹やホテルの調理スタッフならば、技術のあるしっかりした人を雇わなければならないでしょう。それなのに、
人がいないときは休ませる
時給扱いにする
というような、パート・アルバイトと同じ扱いをしてしまったら、その人はきっとすぐ辞めてしまうでしょう。自分を評価してくれるもっとしっかりした職場を求めて。
ですから、このような正社員として就業しているスタッフの人件費は、明らかに固定費として扱うべきです。

逆に、小さめの個人店であれば、調理場はオーナーが立っている場合がほとんどで、その他のスタッフは家族であったり、あるいはパート・アルバイトであったり、ということになると思います。
家族であるならもちろんのこと、パート・アルバイトさんなら、たとえばお店のアイドルタイムは勤務時間を外し、ピークタイムを狙って来てもらったり、あるいはあまりに暇な日は帰ってもらったり、という融通を利かせられるでしょう。
このような状態ならば、この家族・アルバイトさんの人件費は変動費として表せる(お客がいる、売上が上がる時間にしか人件費がかかっていない=変動費)のではないでしょうか。

ただ、飲食店の仕事はアイドルタイムにまったくなくなるか、というとそうではないでしょう。
オーナーさんが店の掃除から皿洗いから食材の仕入準備から全部行う、というなら人件費はかかりませんが、ピークタイムをこなして溜まった食器やカトラリーを洗浄する、汚れたマットを取り替える、その他の清掃をする、など、パート・アルバイトがこなすアイドルタイムの作業は必ず出てくるはずです。
ならば、このスポットでかかる人件費は、固定費となるのではないでしょうか?

……そうなんです。
ほぼ全てのお店では、人件費は変動費と固定費が混在している状態となっている、という言い方が、一番正確な表現なのです。
なので、つきつめるなら、人件費を計算する際、一定の割合で変動費と固定費に分けて計上するのがベスト、ということです。

以前のブログ、「融資を依頼する前に~」では、人件費の全てを変動費として扱う、と申しましたが、これは飲食店のありようとして正確ではない、というのは、これでご理解いただけたと思います。

ですが、もし当該記事で、実際に変動費固定費を出し、限界利益を計算していただいたならば、人件費を変動費化することで限界利益額・利益率がダイレクトに見えやすくなることを、うっすら実感していただけたのでは、と思います。
はっきり言うと、人件費が変動費化(売上が上がるほど高くなるが、売上が0に近づけば0に近づく)できるほど、お店の利益は上がりやすくなる、ということです。

ですが、いくらパート・アルバイトさんといっても、血の通った一人の人間ですので、
・お客がいなくなったとたん帰ってもらい、お客が来たので呼び出す
とか、
・せっかく来てもらったのに、お店が暇な日だったので帰ってもらう
といったような働かせ方をしてしまったら、その人は辞めてしまうでしょう。
そこは利益追求ばかりではなく、人情とか、信頼関係とか、そういった観点で対応すべきかと思います。

と、いうことで、本稿のまとめです。

まとめ
まとめ

人件費には、変動費分と固定費分が混ざっているんだね。
正確に分類して計算したいところだなあ

まとめ
まとめ

人件費は変動費の割合が高くなるほどお店は得になるけど、
常識や限度の範囲でやるべきよね

というわけで、本日もありがとうございました。

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