投資家に見せる創業計画 ~経営シミュレーション~

Gerd AltmannによるPixabayからの画像 1.創業計画

結論から言いますと、投資家に見せるための経営シミュレーション、と言いましても、以前のブログにて記述しました、融資を引き出す際の経営シミュレーション、これとやることはほぼ変わりません。
投資家へのそれは、その中で使うパーセンテージが、若干異なるだけです。

投資家のためのそれでは、基本的に、「30」という数字がキーナンバーとなってきます。この「30」という数字は、起業家(お店)も、投資家(出資者)も幸せにする、ハッピーナンバーなのです。
では具体的に、経営をシミュレートしながら見ていきましょう。

まずざっくりと、客数、客単価を見積もっていきましょう。
客数、客単価は、計算段階では正直、いくらでもいい加減に盛ることが出来る数字です。
しかし、好きなだけ盛る、というわけにはもちろんいきません。シミュレーションの意味がなくなります。
創業当初ならば、客数は以下の式で出してみることをお勧めします。

(客数)=(お店の席数)× 1.5 ×(お店の営業時間)÷ 4

つまり、「営業時間4時間ごとに、客席が1.5回転する」という意味です。
通し営業で、8時間より長く営業する場合は、

(客数)=(お店の席数)× 3

で計算してみてください。

客単価は、このような式で出してみるのはどうでしょうか。

(客単価)=(お店の看板メニュー)× 1.5 ※酒ナシのお店
ただし、ランチ営業をしている場合は
(客単価)=(ランチメニュー)

夜営業でお酒を出す場合は、

(客単価)=(お店の看板メニュー)× 2.5 +(生ビール)× 2 ※酒アリのお店

大まかですが、おおよその実体をつかむのにはいいと思います。
もちろん、実体により近い数字を出せるならその方がいいです。競合他店を回って参考にするやり方もありだと思います。
また、イタリアンやフレンチ、BAR、女性がつくお店等、業態が特殊なお店は、上記のような式では算出できないので、別途お店の実体に則した試算を行うことをお勧めします。

客数と客単価が出たら、

(客数)×(客単価)=(売上)

が出ます。1日ぶんの売上が出たら、これを一月営業日分かければ一月の売上、年間営業日分かければ一年の売上が出ます。閑散期や土日営業など、平日繁忙期といちじるしく差が出ると予想される場合は、その分を差し引きしてみてください。

さて。
ここからいよいよ、ハッピーナンバー、「30」の出番です。

【仕入原価。目標は、売上の30%!】

上記で出た売上に、30%をかけます。

(売上)× 0.3 =(仕入原価)

試算していた仕入原価が、上記より高くなる場合は一考の余地ありです。
仕入原価を下げる努力をするか、メニューの価格の方をもう少し上げてみることをお勧めします。

【限界利益。目標は、限界利益率30%以上!】

今度は、お店を運営していく上での「変動費」と「固定費」を出します。
会計的には、「販売費及び一般管理費」と呼ばれているものです。
※通常の会計基準とは異なりますが、当サイトでは、
「販売費」=「変動費」
「一般管理費」=「固定費」
と考えることをお勧めしています。

変動費(販売費)とは、「売上が上がるほど多くかかる費用」のこと。
固定費(一般管理費)は、「売上の上下に関係なく、固定でかかる費用」のことです。

例を挙げますと、
家賃は固定費。人件費は、会計的には固定費なんですが、当サイトでは変動費として扱います。なので、変動費。テイクアウトの容器代は変動費。電気・ガス・水道代金は固定費。
ただし、仕入原価は変動費なのですが、これは変動費と呼ばず、そのまま「仕入原価」として、別枠で扱います。

お店を運営する上でかかる費用を全部書き出し、変動費と固定費に分けたら、以下の計算をします。

(売上)ー(仕入原価)ー(変動費)=(限界利益額)
(限界利益額)÷(売上)=(限界利益率)

このままだと限界利益率は小数となるので、100をかけて100分率(パーセンテージ)で表します。
この、限界利益率が30%以上となっていることを確認します。
逆に、限界利益率が25%以下、となっている場合は、赤字に転落する確率が非常に高いです。
以下に進んで、損益分岐点を確認した上で、変動費、固定費が圧縮できないか考えてみましょう。

【なぜ、限界利益率30%以上にすべきなのか】

飲食店を営んでいく以上、家賃は必ずかかります。(所有地の上に家屋兼用のお店を建て、一括で支払ったため家賃はかからない、という場合を除いて)光熱費も。そして、保険料なども。
固定費と売上とは、ほぼ相関関係にあります。土地が広く、お店が広い場合は売上が高くなります。
(逆に、高くならなければ危険です)
また、都心に近ければ近いほど、一般的には地価も売上も上がります。
限界利益率30%というのは、いわば「固定費を払っても利益が充分残るラインの目安」と言い換えてもいいかも知れません。
逆に言えば、所有地持ち家で光熱費が格安ならば、多少限界利益率が低くても赤字にはならない、ということでもあります。

【損益分岐点を確認する】

売上から、仕入原価を含む上記費用を全部引いた残りが、営業利益となります。
この営業利益が0となるライン……つまり、「黒字と赤字の境界線となる売上高」を、損益分岐点と呼びます。
ただし、この計算で出てくる損益分岐点は、支払税や借入金返済額を考えていないため、実際店舗の損益分岐点より甘く出ています。注意してください。

一般的に、損益分岐点は以下の式で表せます。

(損益分岐点)=(固定費)÷{1-(仕入原価+変動費)÷(売上)}

上記の式の、意味を考えてみましょう。
まず、(仕入原価+変動費)÷(売上)ですが、これは限界利益額の式を利用して、

(仕入原価+変動費)÷(売上)={(売上)ー(限界利益額)}÷(売上)
=1-(限界利益額)÷(売上)
=1-(限界利益率)

(※証明)
(売上)ー(仕入原価)ー(変動費)=(限界利益額)
(仕入原価)+(変動費)=(売上)ー(限界利益額)

となります。これを与式に代入して、

(損益分岐点)=(固定費)÷{1-(1-(限界利益率))}
(固定費)÷(限界利益率)

この「固定費 ÷ 限界利益率」を利用して、現状での損益分岐点となる売上高が確認できます。
売上が、この損益分岐点になった時、赤字に転落する、ということです。

【土地代+家賃は、限界利益額の30%以下に!】

上記で明らかとなったように、損益分岐点を下げる(=赤字から遠のく)ためには、

・固定費を下げる
・限界利益率を上げる

という、二つのアプローチがあることに気づくでしょう。
そしてここでも、ハッピーナンバー「30」が出てきます。

固定費に代表されるものは、家賃と土地代です。この二つをひっくるめて「地代」と呼ぶことにします。
一般的に、地代の目安は売上の10%、と言われています。
しかし、限界利益額、損益分岐点と見てきて、

「売上を上げたからといって、単純に儲かるわけではない」

ということに、そろそろ気づいていただけていると思います。

お店存続のキーは、営業利益をきちんと出すこと。限界利益額を上げることです。
つまり、固定費たる地代は、限界利益額を目安に決めるべきだ、ということになるのです。

となると。
上記の、売上の10%という地代は、限界利益額に落とし込んで見てみると、およそ30%前後になります。
つまり、地代を限界利益の30%と見込むことで、より営業利益に直結しやすい試算が出来る、ということです。

では、本稿のまとめです。

まとめ
まとめ

仕入原価の理想は、売上の30%
限界利益率の理想は、30%以上
地代は、限界利益額の30%以下に を目標にしてみてください!

ここで試算した数字は、あくまで目安であり、理想です。
なかなか現実は、この試算のようにうまくは行かないでしょう。
しかし、投資家をうならせる「儲かる経営」と考えたとき。
この試算を目標にすることは、意味があると思うのです。

それでは、本日もありがとうございました。

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