お客様の、怖い話

eyes of the World 8.雑記

今からお話するのは、私の住んでいる土地での経験譚です。
全ての土地でそうである、というわけではない……かも知れません。
ですが、正直、どこの土地でも起こりうることであるような気がしてなりません。

前置きはこれくらいにしまして……。
私は、現在非正規で介護職についております。
介護職においては、圧倒的に女性が多く、また権限も強く持っています。
また、年配の方が多く、子育ても一段落していて仕事に注力しても家族の負担にはそうならない、という人が多いように感じます。
そんな人たちと、私はよくお昼を食べに、お店に行きます。
また、どこのお店に行って、こんなものを食べたよ、という雑談を多く交わします。
そんななか、気づいたことがあるのです。

男性と比べ、女性、それも家族の食事を長年担ってきた年配の女性は、食、というものに関して「ある意味」、非常にシビアです。
どういうことかと言いますと。
彼女たちは、新しいもの、珍しいもの、ふだん食べられないような高級なもの。こういった食材、あるいは料理については、確かに一定の興味を持っていますし、また、そう悪し様にののしることはない、のですが。

自分がこれまで長年培ってきた舌に抗うような味付けの食べ物は、基本頑としてシャットアウトします。

どういうことか。
例を申し上げます。
我が町は、長年の衰退を経て、町中華の個人店がほぼなくなってしまいました。
そんななか、我が町で一番の格式を持つホテルの中に、東京でも有名な中華レストランの支店が入ることになりました。
正直、私はそこに行くのを楽しみにしていました。と言いますのも、東京の同系列の店で食べた味が実に自分好みで、忘れられなかったからです。
ただ、こちらに出来たお店はホテルの中で営業するだけあって高級店で、しかもとりわけ式の一品の量が多いタイプ。なかなか一人で行けるものではありません。
それでも、いつか行ってみたい。そんな話を、上記の「お姉様方」に振ってみたところ。

けんもほろろの返答が帰ってきたのです。
それも、まるで口を揃えたかのように、同じ評価が。

「あそこはいけない。おいしくない」
「もう行きたくない」
「好きじゃない」

……今になって。
お姉様方がなぜ「そのような」評価をくだしたのか、ようやく理解出来るようになりました。

我が町の歴史をひもときますと、個人店の中でも比較的大きな高級中華を扱う店が長年営業しておりました。私も子供の頃、よく親に連れられて食べに行ったのを覚えています。
で、そのお店も、また他の我が町の個人中華店も、出される中華料理はほぼ、というか完全に、
「広東料理」
だったのです。

そして、そのホテルに出来た中華店は、「四川料理」。
つまり、同じ中華でも、まったくベースが違う料理を出していたのです。

最近でこそ四川料理は広く日本国民に受け入れられ、辛い味付けを平気で食べる人も増えました。
ですが、くだんの女性たちの舌を支えてきた中華料理は、圧倒的に広東料理だったのです。
なので、四川の味付けに裏打ちされた中華料理を、真っ向から拒否してしまった、ということです。

このようなことは、実は多くあるのではないでしょうか。
そういえば、そばやうどんの汁の色。濃い薄いで関東(東側)と関西(西側)で対立があることはあまりにも有名です。
また、料理につかう醤油も、西に行くほど甘くなります。
東北は塩味の濃い食べ物を好みますし、関西、とくに京都は薄味を好む、と言われてます。
また、テレビ番組などでそれぞれの地域で愛されているお店の食べ物が、他県の人間からみるとわりとぎょっとするような食べ物である、なんてこともめずらしくはありません。

このように、女性に限らずだと思いますが、特に女性、それも年配の女性は、自分の舌にゆるぎない基盤があり、その基盤からはずれた料理を出すと、拒否反応を示してしまう、ということです。
自分としては自信を持って出した料理が、存外受け入れられない。
それはあるいは、その土地で慣れ親しまれてた「別のお店の同じ料理」が、あなたのお店とは全然違う味付けで饗され、愛され続けていたことが理由なのかも知れません。

とかく、この年代の女性の発信力は大きいです。
女性は機械が苦手で使えない、なんて話は今は昔。うちの職場でスマホを持ってない女性、LINEをやってない女性は皆無です。Instagramで好みのインフルエンサーの発信を楽しみにしている人や、Youtubeで料理動画を観るのを楽しみにしている人もたくさんいます。

もし、創業を考えておられるならば。
ぜひ、この年代の女性を敵に回さないことを、強くお勧めいたします。

それでは、本日もありがとうございました。

タイトルとURLをコピーしました