キャッシュレス決済とキャッシュフロー

Steve BuissinneによるPixabayからの画像 3.会計

導入

キャッシュフロー、という言葉があります。
和訳すれば、「おカネの流れ」です。このキャッシュフローを理解すれば、企業が持っているキャッシュの量、使っている内容、今後のキャッシュの増減などが視覚化出来、意思決定の参考となります。

飲食店においては、これまであまりこのキャッシュフローについては意識する機会がなかったのでは、と思います。
といいますのは、飲食業は典型的なBtoCモデル(企業が直接消費者に商品を提供するビジネスモデル)で、しかも取引は(これまでは)ほぼほぼ現金取引だったからです。
逆に仕入においては、月末等に一括で支払ういわゆる「ツケ」での取引が利いたりと、こと現金・キャッシュについては、実は飲食店は恵まれた環境にあった、と言えます。
つまり、販売先であるお客からは即金で対価を払ってもらえ、取引先である仕入先はツケなどによる買掛金処理が出来る、ということです。なので飲食店は、他の企業では一般的に採用されている
「キャッシュフロー計算書」を作る……自店のおカネの流れを理解することに、積極的でなくてもよかった、ということです。

ですが、これまで長らく使われてきたクレジットカード決済にくわえ、非接触型ICカード決済(SUICA等)やバーコード決済(auPAY等)のような、飲食店にとって「現金後払い」に近い決済方式を導入せざるを得ない状況(現金忌避やコロナ等)が少しずつ広まっているのが現状です。

これのなにが怖いか、というお話を、これから少しだけしたいと思います。

飲食店における現金支払とその他の支払

全国の飲食店における現金支払と、ICカード・バーコード等のその他の支払方法とを比較すると、現状は現金支払を選ぶお客様は46%程度、ということでした。
現金支払のみを認めるお店もまだ依然として(20%前後)ありますが、よほど常連客・上客が定着していない限り、駆逐される流れにあるのではないか、と思います。

クレカ決済・バーコード決済を飲食店が導入したら

ご存じとは思いますが、クレカ・バーコード決済を飲食店が導入した場合、クレジットカードの場合は専用リーダー等の初期費用(探せば無料のところもある)と、毎回の決済費用(2~4%弱)がかかります。専用リーダー端末を無料にする動きは、おそらくバーコード決済との競争のためと思われます。
バーコード決済の場合は、導入費用・決済費用が無料(PayPay)もしくは決済費用のみ(d払い等)の施策を打ち出している企業が多いのですが、決済費用は今後有料化・もしくは値上げされる可能性が高いでしょう。既にPayPayは来月10月より、決済手数料を1.6%とするというニュースがありましたし、現在のPayPayの業績赤字は1,300億円にまで膨れ上がっているとのこと。
先に大きく投資金を垂れ流して顧客を囲い込み、後で有料化する、というのはソフトバンクの典型的な戦法。そして、この戦法は「他の追随を許さない」という点で有効であることは間違いありません。
(やりすぎるとダンピングということになりますが)
そしてお店は、このような非現金決済を導入したら、現金決済のお客と「分けて」、商品を高く支払うよう求めたいところですが、おそらくそうはいかないでしょう。なによりお客が不快感を示す(クレジットカード決済で同様の問題が見られ、話題となった)でしょうし、提携先の決済担当会社もそれを許さないでしょう。
ということは、ただでさえ薄い店の利益が、決済費用でさらに削られることになります。

もう一つの問題 入金時期について

PayPayを例に取りますが、PayPayの場合、入金時期は月1回または15日サイクルの月2回を選択できるとのこと。こうなると、飲食店において今まで起こらなかったはずの、「キャッシュフソク(不測・不足)」問題が発生する可能性があります。
(売上) ー (仕入) ー (費用)を計算して、充分利益は出ており、キャッシュがあるはずなのに、金庫・レジを開けてみると全然現金がない。支払が出来ない。そんなことが起こりかねない、ということです。理由は当然、非現金決済を選択したお客の支払が、毎月1回(もしくは2回)にまとめられることにあります。
対策としては、諸々のお店の支払を、非現金決済のおカネが入る後に設定する、あるいは十分な現金を日頃からストックしておく、政策金融公庫からいざというときのための追加融資を相談してみる、等の方法があるかと思います。

キャッシュフローを意識する

このように、決済手段が社会情勢によって変化していく過程で、これまで意識しなくてもよかった問題が顕在化してくる、ということはよくあることです。
今一度、おカネの流れを意識し、可能ならば他企業と同じく、自店でも「キャッシュフロー計算書」をつくっておカネの流れを理解しておく、というような意識改革が必要なのかもしれません。
キャッシュフロー計算書については、後日なんらかのまとめをしようと思っています。

それでは、本日もありがとうございました。

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