ファンダメンタル分析を用いた個別株投資

Sebastian WagnerによるPixabayからの画像 4.投資

おはようございます。
本日はいよいよ、ファンダメンタル分析を用いて個別株投資のための情報を自分のものにする方法について、です。
で、もちろん私は「独自の方法」を用いてそれを生み出せるほどの頭はございません。
いくつかの書籍を参考に、下地を作りましたが、なかでも大きく影響を受けた……というより、本の内容そのままのやり方を踏襲している、と言った方が正確でしょうか……書物がございまして。

予想のいらない株式投資法 泉田良輔

これはすごい内容だ! と、読みながら小躍りしたのを覚えております。
ただ、この本は、最後まできっちり読まないと、短絡な結論に落ち着いてしまい、実際の投資場面で大きな誤謬・間違いをしでかす恐れがございます。どうか私の話だけを信じるのではなく、実際に書籍をお手にとって、学んでいただけたらと思います。

ファンダメンタル分析で求めたい「情報」とは

さて。
ファンダメンタル分析をする、となると、その終着点はどこか? 何を知りたいがためにファンダメンタル分析をするのか? 
おそらくこの問いには、ほとんどの方が、「企業株のバリュエーション(株価評価)」をはじき出すためだ、とお答えになるかと思います。
ですが、バリュエーションそのものを何によってはじき出すのか……PERか。PBRか。企業価値そのものか。DCF法か。あるいはもっと高度な知識を用いてか……。これは結局、未来予測を織り込むいい方法は何か? という追求に他なりません。
私は前回のブログで、ファンダメンタル分析はしょせん占いの道具集めだ、と申しました。占いの道具として占いの結果を収集するのは、なんというか本末転倒・トートロジーに陥っているような気がします。
それよりもむしろ、バリュエーションは、

「現在。市場・機関投資家がどの辺にそれ(バリュエーション)を織り込んでいるのか、それ(バリュエーション)で、彼らはどのくらいの利益水準を見込んでいるか」

という「他の同業者の偵察情報」として処理してしまえばいい、と考えます。

我々が集めているのは「占いの道具」です。バリュエーションは、「占いの結果」です。
つまりは、「同業他社がどんな結果を出してるのかな?」という市場調査に目を通し、それを参考値として目安にする、くらいの意味にとっていただければと思います。

なら何を終着点とすべきか? 我々は何を求めて「ファンダメンタル分析」をするのか? といいますと。

「会社の過去情報と、過去の(どっかの証券会社とか、機関投資家とかが出した)バリュエーションとを比較し、会社の『儲ける力』がどれくらい上がったらどのくらいバリュエーションが上がったのか」

という、企業の「加速度」を知る、ということであります。

この加速度として有益な数字こそが、「ROE(自己資本利益率)」です。

ROE、自己資本利益率とは、

当期純利益 ÷ 自己資本 (×100 (%))

で表されます。自己資本とは、雑に言えば株主資本とほぼ同額のものであり、純資産から新株予約権・被支配株式持分などを引いたものです。純資産のうち、他人資本を引いたもの、と言ってもいいかもしれません。

この数字は、要は「株主のおカネの総額(プラスアルファ)で、何%の利益を積み増しできたか」を表した、ということになります。

簡単に考えると、たとえばROEがプラスならば、自己資本(≓株主資本)はその分一定の比率で「加速度的に」積み上がっていく(増えていく)、ということです。

ここ、「加速度的に」という部分に着目して下さい。

よく、投資した金額は(預貯金もそうですが)複利で増えていく。複利は人間が生み出した最大の発明だ、なんてことを申しますが、株価→自己資本が「複利で増えていく」※ という言葉の凄みが、これでお伝えできたのではないか、と思います。

※2022/3/3 修正

ROEのデメリット

ROEを参考とする際、デメリットとして、「負債(≓借金)が大きければ大きいほど、ROEがデカくなる」というものがあります。

これは、例えば

・借金10億、純資産(資本)10億、当期純利益10億のA社
(※純資産 = 総資産 ー 負債。つまりこの企業の総資産は20億)
・借金0億、純資産20億、当期純利益10億のB社
(※この企業の総資産は20億)

のROEを比較すると、

ROE(A)= 10億 ÷ 10億 = 100(%)
ROE(B)= 10億 ÷ 20億 = 50(%)

と、さもAがものすごく優秀に見えてしまうが、実際は無借金経営のBの方が財政健全性が高く危険が少ない、ということになるわけです。

つまり、「負債」の概念が抜けている、という指摘です。

ただこれは、ROEと合わせて当該企業の貸借対照表やキャッシュフロー計算書などを併読すればすぐに分析出来る内容であり、デメリットと言い切れるものではない、と考えます。

そして、負債以上に儲けられているのなら、それはその企業の体力、経営手腕が高い、という証明でもありましょう。

ここでは、「高ROEのうち、当期純利益のわりに負債の高すぎる企業をはじく」というくらいの見方をすればよい、と思います。

当期純利益、減益と赤字について

会社も生き物です。いいときと悪いときがあるものです。その揺らぎは、当期純利益に表れます。
当期純利益がプラスだと、それの一部は翌年の自己資本に積み増され、一部は株主に「配当」として還元され、一部は内部留保されます。ROEの分母が大きくなると、翌年の当期純利益が昨年並みだった場合、(分母が大きくなっているため)ROEは下がります。ROEが維持されるためには、当期純利益が「同じ割合で・加速度的に」増えていかないとなりません。
逆に言えば、ROEがプラスになり続けると、自己資本(≓株主資本)が毎年加速度的に積み上がる、ということです。
すると、株価の上下はあれど、底値は切り上がっていくだろう、というのは自明でしょう。
その速度は、ROEが高ければ高いほど早くなるはずです。

逆に。当期純利益がマイナスになった(最終赤字を出した)時はどうでしょうか。

最終赤字を出すということは、この積み上がる速度が「減速」ではなく「逆進」することを意味します。自己資本(≓株主資本)が毀損する、ということです。
自己資本が毀損する、ということは、純利益を生み出す動力が小さくなる、ということで、一期の「赤字」を取り返すのに、今まで以上の体力を要する、ということです。
減益なら、もう少し事情はゆるやかです。ROEが「低減」する、ということは、「0以下になる」ということではなく、少ないながらも自己資本は積み上がっていくからです。
むしろ、減益というインパクトから株価が下落したとしたら、それはある種の「株のバーゲンセール」と取ることも出来ます。有望な株を安く買えるチャンスです。
(ただし、その企業が以後、減益から立ち直るだろうという確かな確証が必要だろうことは言うまでもありませんが)
減益はしょうがない。しかし、赤字はいけません。その理由が、上記だということです。

もう一つの指針

ROEと対をなす、もう一つの指針があります。営業利益率です。
営業利益率とは、

営業利益 ÷ 売上高(×100(%))

で表せます。
営業利益とは、売上総利益(売上高 ー 売上原価)ー 販管費(=販売費及び一般管理費)のことであります。
以前のブログでご紹介した「限界利益」に似ています。限界利益から固定費を引いたもの、という言い方も出来ます。
当期純利益だけを見たのでは分からない「営業経費(会社を運営するために、必ず毎期かかる経費)」を差し引いた額。会社の「現在形での戦闘力――稼ぐ力」を示しています。
戦闘力が高く、かつ自己資本が加速度的に積み上がっていく企業が、有望でないわけはないのです。

だいたいにおいて、ROEと営業利益率がともに10%を超える企業は、なにか秘密を持っていると考えていいでしょう。その秘密がもし、さらに企業研究を推し進め、例えば財務諸表を読んだり、四季報の業績欄を読んだりして解けたなら、それはあなたにだけしか分からないその企業の「強み」を理解したことになる、ということであります。

まとめ

個別株の長期投資においては、「景気の波」が必ず訪れます。
業種単位で好不調の波が襲ったり、あるいは国単位で好景気不景気が繰り返したり、もっと大きな要因によって全世界単位で不景気が襲ったりします。リーマンショックや今回のコロナ禍は、まさに全世界規模での景気後退の波と言えるでしょう。

だいたい、この好景気と不景気の波は八~十二年で繰り返す、といいます。
なので、間をとって、およそ十年間の企業財務を研究することができれば、ファンダメンタル分析としては上等と言えるのではないでしょうか。

国単位で経済が「低迷」したとき。その企業が不況をどう切り抜けたのか。あるいは切り抜けられなかったのか。逆に、好景気のとき。どれほど驕った経営をしたか。あるいはしなかったのか。
景気の一つのサイクルの中での、企業の振る舞いを、ROEと営業利益率を軸に分析することで、その企業の未来を「占う」ことが出来るというものです。

バリュエーションそのものを算出するのではなく、その景気サイクルのなかで他の証券会社、機関投資家が決定したバリュエーションと、企業のROE・営業利益率とを比較検討することで、未来の企業のバリュエーションを予測できるのです。

最後に、株価の「複利の魔力」を実際の数字で示すことで、本稿を終えさせていただきます。
株価上昇の目標を、仮に三年で二倍になる株を探す! という風に決定したとします。
三年で二倍になる、ということは、「72の法則」を利用すると。

72÷3(年) = 24

つまり株価が24%ずつ上昇するなら、その企業の株価は三年で二倍になる、ということです。
(※正確に計算するなら、25%必要)

それでは、本日もありがとうございました。

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